名車礼賛 vol.1 「ダイハツムーヴ」

名車礼賛というある意味でパクリ企画。第一回などはどうしてもトヨタや日産あたりになりがちだが、あえてそれは外してダイハツから選ぶことにした。ダイハツといえばやはり「ムーヴ」が代表車種となるが、それだけの理由ではなく「ムーヴ」は非常にいいクルマだと思っている。現行「ムーヴ」がデビューしたのは2002年10月だから、もう1年半が経過する。しかし、新車効果の続く1年目を過ぎても、販売は落ち込まずむしろ前年同月を上回る時もあるという。これは、やはり「ムーヴ」というクルマが評価されているためだろう。特にどこが評価されているのかというと、おそらくまじめさにあると思う。「ムーヴ」は1にも2にもまじめ。遊び心や挑戦的な部分はなく、頑固なまでに堅実なクルマに仕上がっている。ダイハツというメーカーは昔から、こういうところがあるが(時に突拍子もないものも作る)「ムーヴ」はThis is DAIHATSU.といえるようなクルマである。

私も含めて、どうしてもクルマが好きな人間はクルマに特別なものを求めたがる。だから、ベーシックなクルマやシンプルなクルマを見ると、デザインがつまらないとか、なんとなくおもしろみがないとか、そういう言葉を口にしてしまいがちだ。しかし、基本となる車種は思いっきり堅実に作り、そしてその上で遊び心のあるクルマを作るという姿勢は間違ってはいない。「ムーヴ」も登場当初はデザイン的にもあまり変わり映えがしないと思ったが、1年半が過ぎてみるとあまり古くならないデザインであるようにも思う。室内空間はこれでもかというほど広く、インパネを含めた内装の質感にもぬかりはない。また、装備面でもナビゲーションに安全装備と先進装備を多く投入している。走りだって手堅くまとめられており、エンジンも3気筒と4気筒、ミッションは5速マニュアル、4速ATにCVTまで用意している。燃費も軽自動車トップレベル。SU-LEV認定車も設定している。常にダイハツのフラッグシップとして最高のものを採用している姿勢は恐れ入る。ただ、価格面では特にカスタムシリーズはそれなりにする。ベーシックな「ムーヴ」は80万円台から用意されているから、価格重視の人はそちらを選ぶこともできるが、カスタムは120万円以上が販売の中心だ。これは軽自動車としては、かなり高い部類に入る。

しかし、それでもカスタムシリーズは多く売れている。特に価格重視派の人たちだけではなく、140万円とか150万円とかのモデルも少なくない販売台数を占め、値引きもそれほど多くはしていないという。あるダイハツ関係者が、安さで勝負するのではなく、価格なりの満足ができるものを提供する姿勢が成功していると語っていたが、家電製品でも家具でも、今の時代安いものも売れているが、高価格でも本物なら売れるという言葉を思い出した。ミラのようなベーシックで価格の安いものと「ムーヴ」のような高品質高価値で高価格のものと軽自動車も二極化の時代にあるのだろう。そんな「ムーヴ」だが、あまり注文をつけるところがない。デザインなどは好き嫌いはあるものの、それはあまり注文にはならない。ただ、個人的な印象から言うと、特にカスタムシリーズのボディカラーは見直してもいいんじゃないかと思う。似たような色ばかりで、全体的に田舎くさい独特のダサさみたいなものが漂う色ばかりである。カスタムシリーズにもライトブルーやラベンダー系の淡い色があってもいいと思うし、これだけ売れているのだから、選択肢も12色くらいあってもいいんじゃないだろうか。

「ムーヴ」は現在販売されている軽自動車の中では、もっとも高い商品力を持った1台だ。発売から1年半が経過してもなおそのアドバンテージはそれほど追いつかれていない。スズキも焦りを感じているはずだ。デザインさえ気に入れば「ムーヴ」は、100%おすすめできる1台だと思う。