名車礼賛 vo.2 マツダベリーサ

「上級感」とか「上質感」というキーワードをアピールするコンパクトカーというのは、少なくはないように思う。けっこう安易にメーカーも使う言葉だから、今さらという感じもする。代表格としてはトヨタイストなどがあるが、しかし、私の印象では、多少なりともその上質感が感じられるクルマというのはそれくらいである。あとは、フォルクスワーゲンポロとかこの辺のヨーロッパ車は上質感というのを売りにしているが、そうは言っても元々コンパクトカーというのは価格が安いだけに、上質とか上級というのは、果たして本当にそう言えるのか疑問なところはある。そういう中で登場したマツダベリーサは、なるほど確かに上級感というのを表現している。また、価格設定もこのクラスとしては強気の140万円オーバーというものである。120万円台のグレードがない。マツダというブランドはどちらかといえば、スポーティというイメージはあっても、高級というイメージはないから、これで大丈夫なのだろうか?あらぬ心配を感じさせるが、その辺はマツダもわかっているようで、販売目標は控えめの2,500台だ。

上級感とか上質感を求めるときには、装備もさることながら、まずはデザインが良くないといけない。ベリーサは、この点はまずまずというところだろうか。どことなく見たことがある雰囲気が漂うが、アクセラの1.5Lよりは質感が高く感じられる。また、インテリアに目を向けても、質感は高くまとめられていて、シンプルでモダンという言葉がよく似合う。アテンザの骨格とほぼ同じというシートは大きく、ゆったりと座ることができるし、室内空間も広いものである。そして、次に装備となるが、フル装備はもちろんのこと、上質感をアピールするため、ブラックアウトメーター、ステアリングスイッチ、カードキータイプのアドバンストキーレスシステムなどを標準装備。また、パッケージオプションとして、主にメッキ調のパーツをエクステリアに加えた「ドレスアップパッケージ」と、このクラスとしては珍しいレザーシート、そして木目パネルなどを加える「レザーパッケージ」を用意している。このベリーサのポイントの中で、私が気に入ったのは、カラーである。インテリアのオリーブ調のカラーコーディネートもなかなか個性があるし、またボディカラーも日本車では数少ない微妙な感じの色を多く揃えている。この辺は、ちょっとシトロエンを連想させる。

「web TUNE」で私は自分なりに1台のベリーサを作ってみた。すると、意外と安かった。オプションには、レザー+ドレスアップパッケージ、DSC、ミュージックHDD、ディスチャージヘッドライト、アルミホイールなどを選び、かなりオプションは付けてみたのだが、200万円は超えなかった。この内容で190万円前後なら満足できるのではないかと思う。しかし、贅沢を言えば、もう少し充実度が欲しい。146万円〜という価格で考えると、その価格に見合っているとはいえ、お得感は少ない。ディスチャージヘッドライトとかアルミホイールとか、あと1〜2品くらいは追加装備があってもいいと思う。それから、切り口としてはもう少し違うものもあったと思う。本当の意味でプレミアムコンパクトを目指すなら、リヤディスクブレーキ、DSC、それからリヤの中央席ヘッドレスト&3点式シートベルトあたりは標準装備してもいい。こういうクルマとしての基本をしっかりやるのがマツダの魅力であり、また求められるものではないのだろうか。価格は多少は上がってもそういうクルマを求める人にマツダはクルマ作りをするのが合っていると思う。

とはいえ、登場当時にはだいぶ質感の高いコンパクトカーだと思った、デミオもベリーサと比べると質素に見えるし、大人っぽさもある。最初の話に戻れば、私は数ある上質感とか上級感という言葉を使うコンパクトカーの中で、ベリーサは本当に上質感があると考えてもいいと思う。この内容であれば、146万円という価格も納得できるものだし、満足も行くだろう。ファミリアのお客も抱えたいという思いもあるのだろうが、そのクラスから乗り換えても違和感はない。それほど大ヒットするモデルではないだろうし、人とは違った1台に乗りたいという人には魅力のあるクルマなのではないだろうか。