スズキと日産のシナジー効果

今日、このような記事を興味深く読んだ。

http://www.nissan-global.com/JP/NEWS/2006/_STORY/060602-01-j.html

日産とスズキというと、すでに日産ブランド初の軽自動車「MOCO」を2002年からOEM供給を受けており、日産の軽自動車市場の参入にスズキが手を貸したというようなことになっている。

現在日本の自動車市場において、月に売れるクルマの台数の30〜40%は軽が占め、日産としてはこの市場は無視できないものとなっている。日産くらいの規模のディーラーなら、軽は置いておけば、月に3,000〜5,000台は難なく売れてくれるし、それは日産ブランドとしての販売台数を上積みできる上、日産車ユーザーの多くはセカンドカーに軽を所有しており、そういう人たちをつなぎとめておくことはディーラーにとっては非常に大切な事。たとえ、生産は日産が行っていなくとも、ディーラーの収益は上がるからだ。

長年トヨタと日産は軽を持っていないことがアピールポイント(乗用車専門メーカーです!)だったが、本当の意味で純粋に軽を持っていなかったのは日産だけだった。トヨタは子会社にダイハツがあり、トヨタの軽=ダイハツといっても言い過ぎではない。しかし、軽を開発するとしても、実は簡単なようで非常に難しい。軽となれば、新規にプラットホームを開発せねばならないし、エンジンも660ccの専用のものを作らなければならない。そして、日本だけの特殊な規格のため世界で販売ができない。そういうものを新規開発して、軽自動車として納得される価格で販売し、そして利益を出すのは非常に大変な事なのである。高級車を作る技術も大変なものだが、軽を作る技術も同じくらい、実はすごいことといえる。

だから、日産は今だ自前で軽は作らず、スズキと三菱からOEM供給を受けて販売している状況である。スズキというメーカーは同じくマツダにも軽をOEM供給しているが、この会社は売ってくれるなら、どこにでも供給するという姿勢の会社である。その方が量産効果が上がるためである。例えば、日産の「MOCO」はスズキ「MRワゴン」の双子車であるが、先代では、末期にはスズキは2,000台少々しか売れてなかったのに、日産ブランドでは4,000台はコンスタントに売れていた。若干スズキから日産にお客を取られていることを考慮しても、スズキだけで売っているよりも、日産に供給することで、倍の台数を生産できるメリットがある。

日産はその後、軽商用車、軽トラックを三菱から、そして2つめの軽乗用車「オッティ」を三菱からOEM供給を受け、今後は三菱との関係を深めるのか?と思っていたら、どうもそうでもなく、スズキとの提携関係も深めようとしているようだ。これは、スズキがGMグループを離れたこととも、大きく関係しているのかもしれない。

この記事で、注目したいのは、1つめにジヤトコからスズキにCVTが供給される点。これから軽もCVTが主流になってくるのは間違いない。CVTのドライバビリティの良さは、先日の「ベルタ」の回でも報告した通りだし、小排気量の軽にとっては、その効果は大きく、5速や6速ATを搭載するよりも、コスト面でも安く、コンパクトである。ライバルであるダイハツは、6月19日に発売する新型車「ソニカ」で、新開発のCVTを搭載する。これにより、新開発のKF型エンジンのターボチャージ付でなんと、23.0km/Lの燃費を記録するというし、このCVTは今後、ミラやムーヴにも拡大採用されるのは間違いなく、スズキとしてもCVTを強化しなければならないのは大きな課題のはずだ。そういう意味で、CVTの経験豊富なジヤトコからCVTを納入することは大きなメリットである。

次に、日本国内の話で「2006年末より、日産がスズキにミニバンを、スズキが日産に新たな軽乗用車をそれぞれOEM供給する。」という部分も気になるニュースだ。ますます拡大する軽自動車市場に、日産はラインナップ強化をしたいという思惑があるのは間違いない。ただ、この車種が何かは今のところわからないが、今年末にデビューするスズキの新型車を供給ということかもしれないが、すでに2BOXの「オッティ」「MOCO」があることを考えると、新型車ではなくタイプの違う「エブリイワゴン」あたりという可能性も十分に考えられる。

逆に日産は、スズキにミニバンを供給する。これは、おそらくスズキの客層から考えれば5ナンバーサイズの「ラフェスタ」か「セレナ」が濃厚だろう。スズキは、ここ数年軽自動車よりも、どちらかといえば、普通車に力を入れている。これは、海外市場の開拓とともに、国内でもいつ軽自動車というものの規格が変わるかわからないという危機感もある。今すぐにということはないにせよ、将来的に軽自動車の規格が1.0Lクラスまで引き上げられたり、ややもすると軽というもの自体が消滅する可能性だって100%ないとはいえない。1.0Lクラスにまで引き上げられれば、おのずとトヨタや日産、ホンダとの競合もしなければならない。軽は軽の世界で・・・という甘えは効かなくなってしまうのだ。

新型「スイフト」は、普通車革命の第一弾であり、国内外でも高く評価され、多くの賞を受賞。私を含めて、スズキがこんなにいい普通車を作れるのか!!という驚きを与えてくれた。その次の「エスクード」でも、スズキのクルマのイメージをいい意味で裏切ってくれたし、今年もフィアットと共同開発した新型車「SX4」をデビューさせる。軽のスズキから、普通車もイケるスズキにイメージを転換しようとしている。その中で、今もっとも売れているミニバンをスズキのラインナップに加えることは、非常にスズキにとってもうれしい話と考えることができる。

それに対して、ダイハツは30年以上軽シェアナンバー1のスズキを抜くことにやっきになっている。軽自動車のモデルチェンジや、新規車種の投入が最近消極的ともとれるスズキと対象的に、次々と新型車を投入し、ナンバー1奪取を目指している。その反面、普通車はどんどん姿を消し、残っている普通車は、すべてトヨタと共同開発したものや、トヨタの販売店でも売っているもので、完全にダイハツの販売店の中ではオマケという位置付けだ。これは、ダイハツという会社が、スズキとは対照的に、最終的にもしものことがあれば、トヨタに吸収されればいいという割り切りができているためであることは間違いない。スズキはGMとの事業関係は継続するとはしているものの、資本関係は解消される。こうしたことも、他のメーカーとの関係をより深いものとしようという方向を模索する中のひとつに日産との関係があるとも思われる。