心づかい

私は駅の近くにある弁当屋で弁当を買う。この弁当屋は作りたてなので、ここのを食べ始めるとコンビニ弁当を食べようと思わなくなる。値段もむしろコンビニ製品よりも安いのである。それはどうでもいいが、いつも通う店だから、その店長らしき人とは顔見知りとなっている。特に話をするとかそういう関係はないが、いつも来るなぁという程度に知っている様子である。その弁当屋は毎回割引券をくれて、次回それを使うという感じなのだが、私は今日はその券を忘れてしまった。財布を調べてもないので、お金だけ置くと、店長らしき人はお釣りといっしょにその券をくれる。いつもは弁当に挟んでいる券なのに、今日は手渡しでくれたものだから、「あれれ?」などと思いながら、お釣りと券を財布に入れる。そこで私はなるほどと思った。その店長らしき人は、いつも来る私が券を使わなかったことに気付き、忘れないようにとお釣りといっしょに券をくれたのだろう。そうすれば、意識しなくても券を財布に入れることになる。いつも弁当に挟んでいるわけだから、私は机の上などに置いてよく忘れる。だったら、いつも手渡しをすればいいのに・・・というツッコミは今日はナシにしたい。素直にこういう小さな心遣いを喜びたいのである。こういう小さな心づかいというのは、マニュアルには載らないような性質のものであろう。その人の人間的な面である。私はその店にこれからも通うだろうし、また繁盛しているのもわかった気がする。私ならそこまで気持ちが回らないだろう。今日はたまたま気付いたが、気付かないところで、心つかいや思いやりを、私にかけてくれている人がいるかもしれない。そう考えると自分も優しい気持ちになるのである。