アベンシスから変われるか

トヨタアベンシスのサイトができている。このサイトの「コンセプト」というコンテンツは興味深い。ここを見ると「輸入したのは欧州基準」というテーマにより、次のような言葉が出てくる。「速度無制限のアウトバーン、無数のワインディングロード、街中に敷かれた石畳、都市における洪水のようなクルマの流れ。車作り100年の歴史を越えるヨーロッパでは、生活、文化、街の隅々にまで、クルマという存在が深く浸透している。それ故、ヨーロッパの人々は単なる表面的な特長ではなく、本質的な性能や機能にこそクルマとしての真価を見出す。徹底して欧州にこだわり、そのすべてを欧州のために専用開発した車」なるほどと思う。しかし、同時にトヨタの本音が隠されている。なぜなら、別に日本でも高速走行はするわけだし、洪水のようにクルマはいるし、日本でも生活や街にはクルマは深く浸透しているのである。ではなぜ「欧州のために専用開発した車」は日本のトヨタ車と違うのか。それは、ヨーロッパの人のクルマに対する考え方の違いだろう。わかりやすく言い換えれば、この文章は「日本の人々は本質的な性能や機能ではなく、単なる表面的な特長にこそクルマとしての真価を見出す」といっているのである。だから、このクルマはこれまでのトヨタ車とは違い、まったく逆のアプローチで作ったという主張である。トヨタにしては珍しい痛快な皮肉である。私はトヨタを見直した。しかし、同時に表面的な特長しかないクルマばかり作っているのもトヨタなのである。日本のお客はこんなのでいいよとばかりに、本質的なことは追求せず、見た目だけ変えたインスタント食品みたいなクルマを連発する。そんなトヨタの日本の戦略の中で、アベンシスはある意味で日本の消費者に対する試験のようなものではないか。このクルマが評価されれば、トヨタのクルマ作りも「本質的な性能、機能」重視に変化する部分はあるはずだ。しかし、相変わらず変わりなければ、今後も某ミニバンのようなクルマを作り続けるのだろう。こういうクルマを正しく評価する人が意外と多いことがわかれば、トヨタのラインナップにこういうまじめなクルマが増えるのは確実である。しかし、今までこういうクルマが日本のラインナップになかったのも問題だろう。トヨタも甘えていないで、もっと本質的な部分を追求したクルマを日本にたくさん投入し、消費者にイイモノを教えるべきだと思う。日本の消費者をヨーロッパと違い、本質や機能を重視しない人々にしたのは、まさにトヨタ自身なのだから。