詐欺まがい


名古屋で起こった立てこもり事件は大変痛ましい事件である。これは、被害にあった人だけでなく、おそらく容疑者にとっても大変に不幸なことだったはずだ。容疑者の起こした事件そのものは決して許されるものではないのだろうが、しかし、一部ではこういう事件が起こるのも仕方ないという声もある。こういうある種のフランチャイズ契約を結んで、仕事を回してもらって、収入を得るという(軽貨物運送代理店内職なんて言うらしい)ものは、広告などで月収50万円とか80万円の人いるなどと甘い言葉で人を集める。しかし、現実にはほとんどそんなことはない。高い加入金を取られ、110万円くらいの軽商用車を200万円くらいで売りつけられ、そのローンと維持費、その他の諸費用はすべて自分持ち、月に回される仕事はそれほどなく、月収は10万円前後なんてことも珍しくない。そこから本部の取り分と月会費のようなものを取られるという。今回、容疑者は3ヶ月で25万円しか収入がなかったようだが、会社側は容疑者に問題があったようなことを言っている。しかし、実態はわからない。本当に一生懸命がんばっていたが、仕事がまったくなかったということだってありえる。


そもそも、あまり会社の言うことなど信用できまい。ほとんど詐欺まがいのことをしているのだから。大阪地裁では詐欺を認定、軽自動車のローンの代金請求の棄却と、損害賠償を命じる判決まで出ているのだという。国民生活センターも警告を出していた。今回の事件で、残念ながら犯人は亡くなってしまったが、そんなことをする前に弁護士などに相談するべきだった。だいたい、亡くなった支店長に対してという質問にヘラヘラしながら「それが一番つらい」(→さすがにいかんと思ったのかすぐに嘘泣きまがい)なんていう会見をする社長である。会社の質がわかるというものである。社員の証言も昨日と今日ではえらく違う。まさに死人に口なしである。私は25万円の金でこんなことをするだろうかなあと思う。金以上に人間として許せないことがそこにはあったような気がしてならない。振込みをしても確認もしようとしなかったのが、その証拠ではないのか。ガソリンをポリタンクで売らないようにしようなどとマスコミもバカみたいなことを言ってないで、根本的な問題の追及をするべきだ。それが解明されなければ、このような事件はまた起こる可能性がある。いつも弱いものが死んで汚名を着せられ、悪人がノウノウと生き残るのである。