世界観

改めて思うが、ラパンというクルマは傑作なのではないだろうか。これほどなんでもハマるクルマはあまり思い当たらない。ノーマルのままでも十分個性や雰囲気を持っているのだが、先日発売された丸目ヘッドランプの「SS」には、どこか懐かしいコンパクトスポーツの面影を感じる部分があり、そしてスポーツグレードとしての素質も十分持っている。特別仕様車の「モード」を見ると、同じクルマなのにまったく違う雰囲気を持っている。ダークグリーンのボディに木目をふんだんに使ったベージュのインテリアは、まさにイギリスの雰囲気を感じる。さらには「キャンバストップ」を見ると、これもまったく違うので驚く。ブラック・レッド・ホワイトというコントラストのあるコーディネイトは、ちょっと今までの日本車にはないもので、これはイタリアだなぁと感じる。もうひとつ「ベネトンバージョン」もあるが、これはノーマルと大差がない。ベネトンならもっと飛んだ色使いをしてもいいと思う。ピンクのクッションなんかでお茶を濁さず、シートそのものをピンクやグリーンにするくらいしてもいいだろう。


しかし、思うのは110万円くらいのクルマで、これほどのことができるという点だ。同じボディで同じクルマなのに、まるで違う世界を作っている。ラパンというクルマそのものが、それだけ優れた素材であるのだが、他のメーカーもこういうことを考えてみて欲しい。今の軽自動車やコンパクトカーは、広いとか、何人乗れるみたいなことばかりを追求している。「タント」とか「シエンタ」を見るとここまでやるかという感じだろう。しかし、私には小さなクルマに広さとか多人数乗車をそれほど求めている人がいるとは思えない。それよりも小さなクルマには、個性や選ぶ楽しみとか、愛着が湧くような本当の意味でのパートナーとしての存在感の方がずっと大切だと、多くの人は考えているように思う。もちろん、事実として広さを重視する人はけっこう多い。矛盾しているが、それは結局それしか見る所がないからなのだろう。それ以外に売りがない。しかし、数字だけ勝っているようなものは、1年経ったらすべてが古いだけになる。今の新車効果が続かない最大の理由はそこにあると思う。数字で勝った、あれもこれもあるみたいな物は、もう求められてはいない。現状で十分以上になっているのだ。これからは、独自の世界をしっかり持ったクルマが求められる。メーカーだけで勝手に自己満足してないで、空気を感じ取って欲しい。そういうクルマが長く売れ続ける。使われるクルマではなく、愛されるクルマ作りを目指すべきだと思う。