スバル R2

撮影:Oh!軽さん(お借りしました)


軽自動車は魅力的なクルマも新型車も多いが「新鮮さ」という点ではやや欠ける。限られたサイズの中で、どれだけスペースを確保できるか?というのがひとつの流れになっていて、少し違った視点を持った車はとりあえず後回しという印象。小さいからこそ、室内空間や実用性をどれだけ追求できるか?という事にこだわりを持つことは、ある意味では正統派と言えるかもしれない。しかし、逆にこのサイズで贅沢さを追求してやろうという車があってもいい。広さとか実用性よりも、デザインとか個性、走りなどを大切する。軽自動車というひとつの枠組みの中では、どれも同じジャンルとしてまとめられることも多く、そのタイプや違いがはっきりしない面があるが、私はタントやワゴンRをセレナとかステップワゴンに例えると、R2はティアナやアコードという感覚でいいと思う。両者価格帯は同じだが、求めるものは違うし、そして高級感や質感は比べるべくもない。それくらいの違いがある。

R2は1.0〜1.5Lクラスのコンパクトカーよりも質が高いと思わせるくらいのクルマである。結果的にこのR2は660ccエンジンを搭載する軽自動車として発売されたが、本当は1.3L前後で成立させて、マーチやイストと真っ向から対決したかったという思いがあるんじゃなかろうか。でも、スバルには今のところ1.0〜1.5Lクラスのエンジンがない。技術的には水平対向4気筒でも、直列4気筒でも開発することは可能だが、スバルの規模を考えると、新エンジンを開発することはかなり危険。どうしてもというなら、スズキから1.3Lエンジンを供給してもらうという手もあるが、スバルはスバルらしさを大切にするメーカーであるから、それでは満足しない。致し方なく軽として成立させることになったのだと思う。しかし、それでもスバルはこのクルマを軽として開発はしていないように思う。このクルマは軽の基準で作られていない。

まず、メカニズム的な妥協がない。エンジンは660ccでありながら全車4気筒エンジンを搭載しているし、ミッションもCVT。さらに4輪独立懸架サスペンションを採用。こんなことは、マーチクラスでもやらないことである。前輪のブレーキはSOHCでもベンチレーテッドディスク式。軽自動車はターボにならないとベンチレーテッドディスク式を使わないことが多いが、R2にそうした妥協はない。ただ、ここまでやるなら「i」にABSを標準装備すべきだろう。この1点は残念である。こういうひとつひとつのスバルらしいまじめさと、レガシィのチタンタービンに代表されるような、コストを度外視したクルマの作り方は、少なくともダイハツやスズキが真似できるものではない。ダイハツやスズキは軽自動車のプロであるから、「軽はこういうもの」「軽はこれでいい」というスピリットを持っている。だから、適度なものを適度な価格で提供してくれている。ただ、その反面でスバルのように普通車基準で軽を作るメーカーがあってもいい。その分R2は価格も高く、量販モデルに位置付けられる「R」は112万円。スーパーチャージャー仕様の「S」は130万円となり、1.3Lクラスよりもむしろ高めの価格設定である。でも、このクルマが欲しい人は買うだろう。


(2003年12月20日に書いたものを発見したので掲載)