文化的鎖国

この国会に著作権法の改正案が提出されている。輸入CDを制限するというものである。日本のアーティストのCDも、日本文化の拡大により、アジア地域で幅広く販売されるようになった。中国、韓国、台湾などで発売されている。そのCDは、とても安い価格で販売されている(これは海賊盤ではなく正規盤の話)。これが日本に逆輸入されて、1,980円前後で販売されている場面も見かけると思うが、こんなものがあるから日本のレコード会社から発売されるCDが売れないと、これを規制する法律が通されようとしている。表向きにはなるほどと思う。中国で販売されるCDは1,000円以下で、こんなものが日本に入れば大打撃を受ける。しかし、当初は関係ないと言っていたはずの、欧米の先進諸国のレコード会社にも、これが適応される可能性が出てきたという。アジア地域のCDだけに規制をかけることが表向きできないからとのことらしい。音楽などの文化的なものを守るということは、理解できるのだが、21世紀にもなってこんな規制をすることは時代遅れであり、日本は文化的側面で鎖国になっていくかもしれないと、音楽を愛するものとして不安に感じている。

まず、問題点は輸入盤が無くなる可能性である。例えば、最近ヒットしているQUEENは、日本では東芝EMIからCDが発売されているが、同時に海外のレコード会社から発売された正規CDも輸入されてレコード店に並んでいる。日本盤で発売されていないものも、その中にはある。日本盤は音質が劣化したCCCDというCD規格外のものである。ある程度音質にこだわりがあれば、これは買うに値しない。そのため、私などは、迷わず輸入盤のCD-DAを購入するのだが、この法案が通ると、CCCDしか手に入れることができなくなるかもしれない。また、コレクターにとっても打撃である。楽曲単位では日本盤で揃えることができるだろうが、海外で発売されている異なる選曲のアルバムや、異なるミックス、あるいはリマスター盤などを手に入れることができなくなる。もっと心配なのは、日本盤が発売されないようなマイナーなアーティストのCDは、日本国内で流通しなくなる恐れがある。日本の音楽の幅は大きく狭まる。自由に世界中の音楽を手に入れることを封じられるのだ。表向きは著作者の権利を守るためということになっているが、はっきり言ってこれはレコード会社を保護するためだけのものである。アーティストとしては正規で販売されているCDであれば、どこの国のものだって著作権料は入ってくる。売れたCDが東芝EMIのものであろうと、台湾のEMIのものであろうと、権利を侵害されたことにはならない。

日本のレコード会社というのは、まったくもって努力が足りない。世界的に大変厳しい市場で戦う自動車業界を常に見ているから、そう感じさせるのだろう。日本のレコード会社というのは、自分たちの利権、利益の確保だけに一生懸命であり、お客の方を向き、お客が何を求めているのか、どうしたら買ってもらえるのか、こういう努力をしていない。自分たちの利益を守るためには、音質の悪いものでも押し付けます。音楽ファンの選択肢や自由な音楽の流通を封じ込みます。こんなことをやって、本気でCDが売れると思っているのだろうか。今、彼らがすべきことは、本当にお金を出して買いたいと思える質の高い音楽を適切な価格で提供することだ。こんなことは、どこの会社もやっている。世界的に有名なアーティストから、新人までみんな同じ価格、制作費が膨大にかかったものから、ゴミのような音楽まで同じ価格。文化的なものというが、それで商売をするなら、それなりに努力していただきたい。パソコンの普及や、ファイル交換ソフト、その影響もあるかもしれないが、私はそれよりも今の音楽業界に魅力がないことが1番大きいと思う。こういうことばかりやっていると、結局は自分自身の首を絞めるだけになるだろう。日本人は音楽に対して、どんどん興味を失っていくことになる。

著作権法の改正案は是非とも廃案にしていただきたいものだ。おそらく何も考えてない政治家たちだから、海賊盤の規制とでも考えているのだろう。誰も異議を唱えないという。経済や外交も大切だが、私は常々、日本にも文化や教育を大切にし、その方面を専門とする政治家がもっともっといてもいいと思う。


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