マツダアテンザスポーツ

マツダアテンザスポーツに長距離乗る機会があった。前期型だが、グレードはちょっとマイナーな「20F」。アテンザといえば、どちらかといえば2.3Lがメインというイメージが大きい。実際にスポーツ、スポーツワゴンで売れているグレードは「23S」で、2.0Lはグレード数も少ないということもあるが、あまり見かけない。しかし、セダンではちょっと違い、ユーザー層やカペラなどからの買い替え需要もあってか、2.0Lの比率が高い。こういうこともあって、マイナーチェンジでは、セダンが2.0Lメイン、スポーツ、スポーツワゴンが2.3Lメインというグレード構成になっている。アテンザは、やはりスポーティなモデルだけに、イメージリーダーであり、そしてよりパワフルな2.3Lに人気が集まるのは理解できる。しかし、実際に乗ってみるとベーシックな2.0Lの出来がかなりいい。国内でのアテンザのラインナップは、2.3Lが充実しているが、マツダが高い評価を受けているヨーロッパでは、2.0Lが販売の中心である。だから、というわけでもないが、2.0Lもかなり力が入っていると感じられる。エンジン排気量に違いがあるだけで、基本性能は2.3Lと共通。ボデー剛性の高さ、そして足回りのしっかりとした感じは2.0Lでも存分に味わうことができる。乗り心地も非常にいい。長距離ドライブも快適である。気になるパワーも十分である。日本の道を走るのであれば、これでなんの不満もない。かなりの高速走行ということなら、話も変わってくるかもしれないが、実用域ではパワー不足を感じることなどなく、スムーズに加速していく。ただ、エンジンフィールについては、2.3Lに劣るのは仕方ない。マツダらしくスポーティな味付けはされているが、高回転まで気持ちよく回るという性格のエンジンではない。実用志向である。しかし、唯一気持ちよくないと感じたのは、4速ATだろうか。変速ショックはないが、やはりこのクラスのクルマならば5速が欲しいと感じる。変速制御についても稀ではあるが、もどかしさを感じる場面もあった。静粛性は高評価を与えられる。これは不快ではないという点で評価できる。エンジン音は同クラスのトヨタ車に比べれば大きめだ。トヨタの場合、実用域ではエンジン音はあまり聞こえないのだが、アテンザの場合、2,000回転を超えたあたりからエンジン音が聞こえてくる。しかし、不快なものではない。むしろスポーティなモデルとしてはこのくらい聞こえたほうがいい。ロードノイズなどのいらない音もほとんど気にならない。インテリアは、ベーシックな「20F」とはいえ、質感に不満はない。そして、スポーティさも上手に演出されている。ただ、シルバーのセンターパネルは賛否が分かれるかもしれない。もう少し大人っぽい雰囲気を出していてもいいだろう。その他、リヤ中央席ヘッドレスト、3点式シートベルトが装備されていたのも評価できる。このアテンザスポーツ「20F」は当時の価格で200万円(税抜)だった。この価格はかなりお買い得だ。2.0Lに乗っていると、これで十分じゃないかと思ってくる。

マイナーチェンジを実施したアテンザは、上記で上げた不満点がほぼすべて解消されている。2.0Lエンジンは可変バルブタイミング機構などが追加された、新しいLF-VE型エンジンに変更されているし、ATも全車5速ATとなり、アクティブマチックも装備。さらに加速感が高まり、スポーティさや実用域でのスムーズさ、燃費などに効果を発揮している。また、ボディ剛性のアップや、遮音材の追加なども行われているようで、地道な改良が行われている。また、ドアトリム部にグリップが追加されたのも、ちゃんとお客の声に耳を傾けている証拠でいい。前期型にはグリップがなく、ドアを閉めにくいと感じたり、乗っているときに握る場所がないのは気になっていた。センターパネルもブラックになり、大人っぽい雰囲気に変わっている。ただし、良くなくなった点は、BOSEサウンドシステムがミュージックHDDとしか組み合わせられない点。これはよろしくない。まぁ、そんな不満点はあるが、価格はほとんどアップしていないから、総合的には魅力は高まった。また、スポーツを見てみれば、2.0Lのお買い得感が高まった。新たに設定された「20C」は、214万円(税抜)という価格になっているが、前期型「20F」に対して、5速AT、リトラクタブルタイプキー、プライバシーガラス、CDキット、チルト&テレスコピックステアリングなどを追加。エクステリア面もスポーティグリル、16インチアルミホイールを装備し、スポーティさを高め、「23S」などと比べても不満はなくなった。これで14万円の価格アップならお得だ。「23S」と比べても18万円安い。メディアなどでは、あまり脚光を浴びない2.0Lだが、これだけの商品力を備えているなら2.0Lでも十分だと思わせてくれる。このモデルは2.3Lが欲しいが妥協して買うモデルではない。積極的におすすめできるモデルなのだ。