はいどろじぇん?

数々の魅力的なコンセプトカーたちが出展された「東京モーターショー」。やはり華やかで注目度が高い車が話題となるし、あちこちで取り上げられる。でも、地味ながら重要なクルマもあったりする。そのひとつが、今回取り上げたいマツダのハイドロジェンREである。ハイドロジェンRE?なんだそれという話なのだが、簡単に言えば水素ロータリーエンジン。ここ数年、マツダは水素ロータリーエンジンの開発に熱心で、ここ何回かのモーターショーにも積極的に出展してきた。ロータリーエンジンは、通常のレシプロエンジンよりも水素の燃焼をコントロールしやすいという利点があり、水素エンジンに適したエンジンなのだという。そのため、世界で唯一ロータリーエンジンを量産しているマツダとしては、次世代のエンジンとして水素ロータリーエンジンの未来を熱心に模索しているということだろう。そして、今回出展された「RX-8 ハイドロジェンRE」はほぼ完成形だという。来年にはリース販売ではあるが、官公庁などに向けて市販が開始される。ロータリーエンジンということで、当然RX-8がベースになるが、官公庁向けにRX-8というのもおもしろい。その反面、一応セダンに分類できるとはいえ、RX-8で需要があるのか?といういらぬ心配も感じる。

その話は後にも関連してくるが、この水素ロータリーエンジンの特徴は、第一に当然のことながら水素で走ることができるという点。水素を燃料するとするため、排気ガスはほとんど出ない。出るのは代わりに水蒸気なのである。しかも、それだけではなく、ガソリンを燃料とすることもできる。ガソリンタンクと水素タンクの2つの燃料タンクを持っており、走行中に切り替えも可能。水素だけならば150kmしか走らないが、水素が無くなればガソリンで走ることができるのだから、普通のクルマと変わらない。気になるパワーは、水素使用時は110ps/12.2kgmと、ちょっとスポーティにチューンされた1.3Lエンジン並。まぁ、普通に走るのだろうがパワーはない。しかし、ガソリンを使えば豹変。RX-8本来の210ps/22.6kgmを発揮する。パワフルに走りたい時にはガソリン、まったり環境に配慮にしたい時は水素という使い分けができる。しかも、この水素ロータリーは構造がシンプルでコストも安いことから、近い将来には割安な価格で提供される可能性がある。

しかし、搭載車種がRX-8では普及できない。それに対して出して来たのが、プレマシーハイドロジェンREハイブリッドである。マツダ独自の水素ロータリーエンジンをFFに搭載するために改良し、さらに電気モーターを組み合わせている。プレマシーロータリーエンジンということだけでもワクワクする話だが、電気モーターを組み合わせることにより、ロータリーの弱点である低速トルクを補うと同時に燃費の改善も実現する。ミニバンなどに向いたシステムだといえる。しかも、水素ではなくガソリンを使えばかなりハイパワーなエンジンとなることは確実で、スポーティ仕様としても可能性が広がるものだろう。このプレマシーハイドロジェンREハイブリッドも3年後を目途に市販する計画というから楽しみである。一時は消滅の危機とも言われたロータリーエンジンだが、ロータリーエンジンの持つ利点を生かし、環境性能の高いエンジンを実現できたり、あるいはハイブリッドでトルクの細さや燃費の悪さを改善できれば、将来性はまだまだあるのではないだろうか。スポーツカーだけでなく、プレマシーのようなミニバンや、アクセラのようなスポーツコンパクトにも搭載できれば、マツダの強い武器になるだろう。