最近感じたこと

耐震強度偽造マンションの問題が連日報道されているが、近年こうした物作りに対するプライドというのか、職人気質というのか、そういうものが失われてきたことが気になる。自分たちさえ良ければ、儲かればそれでよいというのだろうか。また、松下電器のファンヒーター回収問題についてもある種の失望を感じている。家電最大手、勝ち組とまで言われたあの松下がこの対応である。ファンヒーターといえば、20年くらい前に同じような事故があり、とあるメーカーのファンヒーターが回収されるという事態になった。緊迫したTV-CMを流し、販売店から所有者を割り出し、警察とともに1件1件を回って回収したのだという。これにより社長が辞任している。しかし、今回の松下はあまりにも対応が遅く、また所有者に対して警告を発する努力もあまり見られなかった。修理で済ませられればいいと思ったのだろう。しかし、その修理もまともにできず、さらに被害者を増やす結果となった。そして結局の回収である。私はだいぶ前からこの成り行きを見ていたが、最初の段階からさっさと全部回収して新しいヒーターと交換すればいいじゃないかと思っていた。松下ほどの超大企業であれば、それほど困難なことではないと思ったからだ。こういう事は、やり過ぎというほどの対応を取ることが大事ではないか。それがブランドを守るために必要なことであり、そういう対応が松下への信頼感につながる。工業製品であるから、何か不具合が起こることはありえることだ。でも、もしもの時にそれなりの対応してくれるなら、松下を買おうという気持ちになる。しかし、今回のような対応では逆に松下のイメージは悪くなり、ファンヒーターはもちろん、他の製品ですら買いたくなくなる。今回の件で100億円がかかるというが、それ以上の損失を出したと考えるべきだ。しかし、こうした風潮が近年の日本企業に広がっていることを危惧する。金がすべて金が第一。儲けのことしか考えていない。それは当然のことではあるが、昔の日本企業はもうちょっと違っていたように思う。あるテレビのコメンテーターが、日本の製品が他の外国メーカーと一番違ったのはアフターサービスがしっかりしていたからだと言っていた。自分たちの製品に対してちゃんと責任を持つ。この安心感がユーザーを増やす大きな要因となった。これは、家電にしても自動車にしても同じだろう。しかし、アメリカ型とでもいうのだろうか。そんな経営体質が入り込むようになってから、日本の企業は変わってしまったのだろうか。

しかし、我々購入する側としても買い物には一定のリスクと勉強が必要であることを知らなければならない。以前建築関係の仕事をする友人に聞いた話だが、近年の安いマンションはみんな安かろう悪かろうだという。もちろんこれは法を守った上での話であり、危険性はないのだが、それでもしっかりした物が欲しければそれなりにお金を出しなさいということである。今回のマンションの問題では、23区内で100平米以上のマンションを調べると、億ションに近い価格の物が多い。4,000万円台など安すぎると思うのが普通だ。素人にはわからないとはいえ、見える部分は豪華に作られていて、一体どこでコストダウンしているのか。私ならそういう話を聞いていることもあるのかもしれないが、怖くて絶対買えない。4,000万円でまともな物ができるなら他もそれに近い価格で売っているべきであり、異常な安さは警戒すべきだ。法を下回るような設計をしているとは夢にも思わないにしろ、買う側はやっぱり勉強しなければならない。今回、この問題で税金が投入されるというが、私はマンションを手に入れる前の段階に戻っていただくということでいいのではないかと思っている。2重ローンや引越しの費用など新たな負担が生じない程度の国の援助はあってもいいが、本来この値段ではありえない広さのマンションを、同じ価格で提供するといったことまで国はすべきではない。同じような詐欺被害や天災の被害者の援助などと比べても、それは行き過ぎである。厳しい言い方をするようだが、安易に安物に手を出したことに対する責任は住人も取るべきで、私はマンションを買う前の状態にリセットするまでを国が補償し、それ以降は買える範囲のマンションをまた探していただくというのが、妥当なものだと思う。