重要文化財 7K-E

日本国内で現在生産されているエンジンの中で、もっとも古いものは7K-E型エンジンではないだろうか。改めて考えてみたが、これより古いものは思いつかない。このエンジンはトヨタタウンエース、ライトエースのバンとトラックに搭載されており、もちろん新品で手に入る。このタウンエース、ライトエースの乗用モデルであったノアには3S-FE型が搭載されていたが、バンとトラックには7K-E型が搭載されている。このエンジンの登場は、初代カローラということで、なんと1966年である。ということは、もうすぐ40年を迎えるエンジンなのだ。こんなものが今だに生産されているとは驚きである。これほど昔のエンジンだから当然OHV。以前は1.5Lだったと記憶しているが、現行モデルのデビュー時に1.8Lに排気量が拡大されている。パワーは1.8Lながら82ps/14.5kgmとかなり控えめ。はっきりいってパワーはない。しかし、EFI化されるなど新しい技術も投入され、排ガス性能もなんとか現代に通用するレベルになっている。

本来であれば、現行タウンエース、ライトエースがデビューするくらいの時代には、新エンジンに移行してもよかったはずだ。しかし、3S-FEは贅沢と判断されたのか。それもあるだろうが、やはり耐久性と整備性、コストなどの問題もあったのだろう。わざわざ排気量を拡大してまで継続して設定することになった。最初は1.1Lだったエンジンが今では1.8Lである。しかしこのエンジン、乗ってみると基本設計が40年も前のものとは思えない。思いのほか静かだし、低速トルクがあって扱いやすい。もちろん改良が重ねられてきた結果なのだろうが、それでもやはり驚いてしまう。とはいえ、あくまでも40年も前の設計なのにという前置きが付いての話である。現代のものとはやはり比べてはいけない。しかし、それでも21世紀まで実用に耐えうるエンジンだったということは事実であり、改めてこのエンジンが素晴らしいものであったことを認識させられる。この7K-E型エンジンは、古いカローラスターレットなどのK型エンジンを搭載する車の愛好者にはありがたい存在でもあるようだ。なにせ新品の部品が手に入る。また、これまた新品でエンジンが手に入るものだから、載せかえたりして、排気量を拡大できるというおもしろさもある。

まさに、化石のようなといってはなんだが、この7K-E型エンジンは、自動車界の重要文化財といえる。日本のモータリゼーション発展期をともに歩み、そして頂点を極め、次のステージへと向かう21世紀まで存在する。このタウンエース、ライトエースは今ではガソリンのみしかラインナップにないため、毎月1,000基程度の7K-E型が新しく作られていると思われる。K型エンジンの総生産基数は一体何基になるのだろうか。当面モデルチェンジの予定はないようだから、あと1年から1年半は少なくとも7K-E型は現役でいられる。しかし、次のモデルチェンジではさすがに使われないだろうから、日本最古のエンジンを味わえるのも今だけだ。