トヨタにはライバルが必要

最近は、金メダルの影響もあり、フィギュアスケートの話題が加熱気味なのですが、隠れフィギュアファンの私としては、オリンピックの前後だけ驚いたように報道するのではなく、普段からスポーツニュースなどで積極的にフィギュアスケートについて扱ったり、ショーなどを放映して欲しいと思うところです。日本のマスコミ(というより、視聴者の問題か?)は、熱しやすく冷めやすいのが難点ですな。

しかし、次のオリンピックで有力なメダリスト候補と目される浅田真央選手に、手ごわいライバル出現とのこと。しかも、それが(ナゼか)日本のマスコミが大好きな隣国、韓国の選手であるから、ここぞとばかりに取り上げているところです。今年の成績を見てみると、トリノオリンピックで金メダルを取った荒川静香選手ですら勝てなかった浅田選手なのだから、現在世界的に見てもトップレベルのスケーターであることは間違いないわけですが、そんな彼女が4年後を目指すにあたり、必要なのはライバルということは頷ける話でしょう。荒川選手でも、同世代の村主選手の存在があったからこそ、ここまで来たといえる面もあるようです。

で、そのライバルである韓国の選手ユナキム(あえてこう書く)選手は、浅田選手とまったく同じ15歳で、誕生日も同じ月ということで、今回オリンピックに出場できなかった人です。この選手のことは以前から、耳にしていたのですが、今回の報道で初めてどんな人か知りました。どちらかといえば、ロリ(と書いたら下品か?)系で、まだあどけなくかわいらしさが残る浅田選手に対し、ユナ選手は大人っぽい表現力に富んだ演技をする人のよう。しかしながら、ジャンプはあまり得意ではないようで、技術力では浅田選手の方が勝ると分析されています。

やはり、同じ歳の強力な選手の存在は気になるでしょう。そんなわけで、これから4年間何かとユナ選手とのライバル関係を煽り、時にちょっとした些細なことを美しい友情話に発展させられたりして、ことあるごとに日韓友好親善大使的な扱いをされてしまうのが目に見えるようで、うんざりするわけですが、私自身はサーシャ・コーエン選手のファンなので、話を変えましょう。

しかし、浅田選手の強さは現在の自分に対する子どもがゆえの過信があるように思えます。これまで特に挫折というものがありそうになく、伸びていく自分しか経験していないのではないでしょうか。フィギュアスケートのように多くの人の前で演技をするという種目では、やはり精神的な強さがとても大切です。今のように私はなんでもできると思えているうちはいいのですが、例えば、ちょっと連続してジャンプを失敗が続くようになったり、伸び悩むようになる時が来ると思うのです。そんなことになったら、失敗するかもしれないという不安感が失敗を呼んでしまいます。また、これから4年間マスコミに追いかけられ、気が散ることも多いでしょうし、フィギュアスケートの広告塔的役割もやらされることになるでしょうが、安藤選手のようになって欲しくないと思います。回りの大人がしっかりスケートに没頭できる環境や練習時間を作ってあげて欲しいものです。

とまぁ、ここまではいつもと違うお話しなのですが、(別に必ずそうと決めているわけではないですが)結局クルマの話題に変わっていくわけですネ。やはり、自動車業界もライバルというものがあるからこそ、よりよく発展していくものでしょう。ミニバンやコンパクトカーは、ほんの10年前までまったく力の入っていない分野でしたが、ちょっとしたことから人気に火が点けば、あっという間に各社が発売し、そして本当にいろんな面で大幅に発展します。こうやって分野別に見ていけば確かにそうなのですが、全体で見た場合、どうでしょうか。私はここに来て、少しトヨタという会社があぐらをかき始めたように見えてしまうのです。この会社は、確かに世界中の中でもかなり自分に厳しめの会社ですが、国内では圧倒的な強さであり、まぁ日産やホンダを無視はできないものの、それでもそんなに大した敵ではないと思っているように感じます。2000年以降のトヨタ車の中でも、特にここ1〜2年に出たクルマを見ると、どうも80点主義の復活を感じてしまうのです。いや、むしろ最近は75点あたりにすら思えます。今の自動車は、普通に作ればそう破たんした商品になるものではありませんから、ちゃんと走らないとか壊れるといったことは出ることはありません。しかし、クルマ作りを見ていると、どうにも手抜き感を感じるのは私だけでしょうか。

トヨタが他社に対して持っているとされるアドバンテージは、装備(アクセサリーの多さ)、静粛性、内装の質感の高さなどがありますが、このうち、装備品やカタログスペックといったものは相変わらずしっかり向上させてくるのですが、静粛性やインテリアの質感は、それほど上がっていないというよりも、むしろ安っぽくなったと感じてしまうものが増えています。しかしながら、車両価格はむしろ上がっており、前モデルに対して大きく利益率が高くなっているのは容易に想像できます。それでもやっぱりトヨタのクルマが売れるのだから、笑いは止まらないだろうなと思います。

ここで、私は日産やホンダ、場合によってはマツダ、三菱に言いたい。しっかりしなさい!と。特に日産には大声で言いたい。デザインは良くなったが(ちょっと最近怪しいが)、なんとも安っぽいクルマばかりではないか。1台あたりの儲けが上がったことは明白だが、このままではもう伸びびません。やはり、お金をかけるべきところには、しっかりお金をかけないとダメ。カルロス・ゴーン氏はまずデザインが良くなければそのクルマのことをお客は知ろうともしない。だから、デザインが大切だと語った。その通りですが、今の日産はそのデザインに惹かれて、そのクルマのことを知ろうとしたお客が、中身を知ってがっかりするケースが多いです。見た目を磨き終えたら、次は中身を磨かないと成長は止まったままにってしまう。やはり、日産には長い歴史の中で浸透した走りの日産、技術の日産というイメージを大事にして欲しい。そして、インテリアにはそれなりにコストをかけて欲しいですね。マーチとプレサージュのドアハンドルが同じなんてことをしていてはお話になりません。そして、フーガですら後席中央ヘッドレスト、3点式シートベルトが全車標準装備ではないなんてこともあってはならない話です。まぁ、代表的な例を上げましたが、その他にもメーターがあまりにもチャチだったり、ラフェスタ、セレナクラスのインパネが軽自動車レベルだったり、言いたいことはたくさんあります。

そして、ホンダはハード面は割と素晴らしい出来のクルマが多いですが、購入に結びつかない車種が多いようです。すなわち欲しいと思ってもらえないのは、デザインに問題があるからというのはずっと前からのお話です。せっかくいい物を持っているのに、出来上がったクルマのデザインの質感が低いから、あまり魅力的に見えないのですね。特にホンダはデザイン力というよりも、スケッチから車体に起こす上でのモデリングやプレス技術に欠ける印象があります。スケッチではとてもボリューム感があってかっこよくても、でき上がると共通してどこか貧相でペラペラなモノになってしまう。シビックもレジェンドもどこか似たような雰囲気があるというのはまずい。やはり日本のクルマを良くしていくのは、日産とホンダであると思うわけです。この2社ががんばり、勢いが付くと、トヨタが本気になる。90年代後半を思い返せば明らかなことだと思います。このままこの2社が伸び悩んでいると、もっと落としても大丈夫そう・・・とますますトヨタが手を抜いてきます。マツダ、三菱はややニッチな方向ですが、こちらがきっちりと良いクルマを作っていれば、おのずとトヨタも対策を考えなければならなくなるでしょう。

今の大きな問題点は、トヨタに強力なライバルがいないこと。トヨタプルシェンコ状態。自分のモチベーションを保つことや、向かうべき道が見えない。静かな自分との闘いという、案外辛い立場かもしれない。